遠くの海の小さな島に大きなトリがいた。
トリは大きくて大きくて空をとべなかった。
トリは仲間においていかれた。
だけど、トリはとっても呑気に唄をうたった。
トリの唄声は島中に響いた。
気づくと うさぎと ねずみと カメが 集まっていた。
みんなは毎晩一緒に唄った。
唄は毎晩あたりまえに空を流れ、遠い海を照らす。
ある日カメは旅に出た。
海が呼んでいた。
カメはずんずん進んでいって、姿がみえなくなった。
それでも トリと うさぎと ねずみの三匹は やっぱり毎晩唄をうたった。
カメに届くくらい大きな声で、やっぱりのんきに唄をうたった。
ある日、ねずみが姿を消した。
寒さから逃げなければいけなかったから。
ねずみは遠くの洞窟の奥深くに入って眠った。
それでも トリと うさぎの 二匹はやっぱり毎晩唄をうたった。
ねずみがぐっすり眠れるように、キレイな声で唄をうたった。
少しだけさみしくなったその島で、
やっぱりあたりまえに海を照らすトリの唄。
唄はいつでも陽気になり響く。
そのあたりまえに酔いしれて、うさぎはとても幸せだった。
だけどやっぱり、うさぎも島をとびだした。
海のむこうに何があるのかどうしても知りたかった。
トリの唄をききながら、
うさぎは島をとびだした。
トリは相変わらず陽気に唄をうたう。
そして一粒 大きな涙を流した。
ある朝、トリはひっそりと死んだ。
とべない羽にくるまって静かに静かに目をとじた。
次の春、カメと ねずみと うさぎは 島に帰ってきた。
そして、冷たく小さくなったトリをみつけた。
三匹は三粒の大きな涙を流した。
それから三匹は、
トリの唄をうたった。
あたりまえだったトリの唄をうたえば、
あたりまえにあの頃を思い出せると知っていたから。
あたりまえだったトリの唄をうたえば、
あたりまえにトリに逢えると知っていたから。
三匹はいつまでも唄をうたった。呑気に陽気に唄をうたった。
トリの唄は素敵な唄。
トリの唄は魔法の唄。
トリの唄 作詩 灯梨映子
のんきにのんきにさあ唄おう
やさしい風ややさしい雨をたくさん浴びて
のんきにのんきにさあ踊ろう
冷たい風や冷たい雨にうたれても
ここに来た理由は分からなくても
ぼくらは出逢ってそしてまた行きたい所に行けばいいのさ
のんきにのんきにさあ唄おう
やさしい風ややさしい雨をたくさん浴びて
のんきにのんきにさあ踊ろう
冷たい風や冷たい雨にうたれても
ずっとここにいる必要はないのさ
ぼくらは別れてそしてまた逢いたいときに逢いましょう
のんきにのんきにさあ唄おう
やさしい風ややさしい雨をたくさん浴びて
のんきにのんきにさあ踊ろう
冷たい風や冷たい雨にうたれても